小林貢先生

 日本が開発した世界に誇る「光電型カートリッジ」を

             歴史的・技術的・文化的な価値から復活させたDS Audio

 光電式カートリッジはオーディオが大ブームとなっていた1960年代末に国産メジャー・ブランドが実用化していたが後継機は現れず短期間で姿を消し、今では忘れ去られた存在になりつつあった。当時の技術や素材では大手メーカーといえども十分な精度が確保できずにフェードアウトしてしまったのでは、と想像できる。
しかし光電式カートリッジは㈱デジタルストリームが擁するDSAudioの手で復活を果たし昨年末に発表された。DSAudioでは㈱デジタルストリームが長年に亘り培ってきた高度なノウハウを応用、高精度パーツを投入することで大手メーカーでも成しえなかった光電式カートリッジDS001を完全な形で復活させた。
ここでは原理や構造の詳細には触れないが本機は電磁誘導の原理を応用した従来方式のカートリッジのように磁界の影響を受けずに針先の振動を光の変化として検出し発電する。その結果として信号処理のプロセスが省かれ歪の低減と高S/N化が可能になる。

 



アナログマスターのような音質、
   従来のアナログとは一線を画する新たな世界

 実際に本機のサウンドを聴くと明らかにノイズ・フロアが下がり無音溝や弱音部の静寂さがリアルさが増す。そしてホール録音のソフトなどはホールの空間が一回り広くなり残響成分の透明度も高まってくる。
 また個々の音像が明瞭に描き出されるが輪郭を強調するような不自然さをまったく感じさせないのが好ましい。
再生レンジの広さは特筆すべきものがあり、特に低音域はアナログでは不可能と思えたインフラソニック領域まで容易く再現し空気感も鮮明に再現するレンジと高い解像度が確保されている。
コンテンポラリー系ジャズの重心の低いキックドラムのアタック音もスムーズかつ軽快に立ち上がる。量感を付加した鈍重な低音を聴きなれた耳では低音不足と感じてしまうかもしれないが本機は帯域的にボトムエンドまでフラットに伸びた質の高い低音再生を実現しているのだ。こうした質の高さを感じさせる反応の良い低音再生能力やトレース能力の高さはMM型やMC型カートリッジと異なり磁石やコイルを搭載する必要が無く振動系の実効質量を軽減できるという大きなアドバンテージが功を奏しているのだと思う。
そして中域から高域にもエネルギーバランスの偏りのないフラット・レスポンスを実現し色づけやクセを一切感じさせない自然な質感を得ている。ヴォーカルなどは瑞々しい表情で再現され弦楽器群の艶やかさや繊細感をあくまでも自然に引き出してくるのが好ましい。

 

また本機は音溝からピックアップした信号を正確に音楽に変換しジャンルを選ぶことなく音楽を精密に再構築する感がある、そのサウンドはマスター音源に一歩近づくように思えた。そして従来からのアナログならではと思わせるサウンドを超えたアキュレートさを備えているのも本機の大きな魅力といえる。

近年ではカートリッジ単体でも30万円以上もする高級品は40機種以上に及び、中には100万円を超える製品まで存在する中にあって専用フォノ・イコライザー・アンプを含めて35万円台という価格設定は破格であり極めて良心的といえるだろう。

                       オーディオ評論家     小林貢